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一般に、アジといえばマアジのこと。からだの側面、頭のうしろから尾にかけてゼイゴとよばれる硬いうろこが見られます。青みがかった背に白っぽいお腹は、サバやサンマ同様、青魚とよばれる魚に共通する特徴。背中の青は空から見ると海の青に溶け、お腹の白は下から見ると海面からさしこむ光にまぎれるので、この色の組み合わせ、じつは敵から身を守るための保護色では、という説もあるようです。
アジは干物にしてもおいしい魚ですが、伊豆(いず)諸島の特産品「くさや」はちょっと異色の個性派干物。ムロアジなどを独特の手法で加工した干物で、その名のとおり、鼻が曲がるほどの強烈なにおいで知られます。とはいえ、美食家で知られる北大路魯山人(きたおおじろさんじん)は、「美味さにおいて干もの中の白眉(はくび)」と大絶賛。「食」の奥深さを知るには絶好の一品(?)かもしれません。
アジはエチゼンクラゲにくっついて泳いでいることがよくあるそうです。その目的は成長につれて変化するらしく、一番初めは仲間と群れを作るための目印に利用します。つまり、待ち合わせ場所。少し大きくなると天敵から身を守るために、クラゲの傘をかくれ家にするのです。そして、クラゲが集めたプランクトンを横取りして食べ、エサ場として活用、さらにはお世話になっているはずのクラゲまでもついばんで食べてしまうとか。アジにとってはエチゼンクラゲ様様といったところでしょう。
「夕ぐれは鯛に勝たる小鯵かな」とは江戸時代によまれた句。アジの旬は夏ですが、いうまでもなく日中の暑さは活きのいい魚の大敵。そこで陽ざしがかたむいて風が涼しくなる夕ぐれどきに、江戸の町では「小鯵売り」とよばれる人たちがあちこちでアジを売り歩いたといいます。とれたての新鮮な江戸前アジを、江戸っ子たちはタイにおとらず愛したのでしょう。