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アナゴといえば、一般にマアナゴのこと。蒲焼(かばやき)になってしまうと見た目はウナギと区別がつかなくなってしまうマアナゴですが、蒲焼になる前なら見分けることは可能です。ウナギとのいちばん大きなちがいは、体側部(たいそくぶ)に頭から尾にかけてほぼ同じ間隔で並んだ白い点。アナゴの別名・ハカリメは、この白い点がかつて魚市場で使われていた竿秤(さおばかり)の目盛りのように見えることからつけられたものです。
アナゴのにぎりには、刷毛(はけ)でさっとぬられた甘辛いタレがつきもの。アナゴの煮汁に砂糖やしょうゆ、みりんなどを加えたものを煮詰(につ)めてつくったこのタレ、「煮詰め」を縮めて「ツメ」とよばれます。味つけの「詰め」ともいえるタレだけに、ここにこだわるおすし屋さんが多いのは当然。たかがタレとあなどらず、お店ごとの秘伝の「ツメ」、じっくり味わってみては?
アナゴの子どもは、細長い葉っぱのような形をしていて「レプトケファルス」と呼ばれています。レプトケファルスが「小さな頭」を意味する通り、頭は小さく、透明で平らな体をしています。アナゴの子だとはわからないくらいに親と姿形(すがたかたち)がちがうため、昔は別の種類の魚にされていたとか。また、大人のアナゴになるために変態〈姿を変えること〉をくり返しますが、体の大きさが親より一時大きくなり、その後小さくなって最終的に親と同じ姿形になるという不思議な成長をします。
地中海沿岸の国々の人たちは、ヨーロッパでは例外的に魚好き。ギリシャでは紀元前5世紀に、すでにアナゴが食べられていたようです。古い書物の中で、当時の有名な料理人が、「アナゴは塩水で時間をかけて煮こむとよい」と語ったことが紹介されています。彼はアリストテレスと同じ時代を生きた人。かの哲人も、あぶらののったアナゴを口いっぱいにほおばっていた…かもしれません。