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ブリは沿岸性の回遊魚。生後二、三年で、日本の南から北までを行き来するスケールの大きな回遊をはじめます。春から夏にかけて北海道沿岸まで北上、そして秋から冬にかけては産卵のため東シナ海方面に南下します。「あぶらがのる」とは脂肪がふえて魚の味がよくなることですが、冬のブリはまさにそれ。産卵のためにえさをたっぷりとった「寒ブリ」の味わいは、文字どおり「いのち」のめぐみなのです。
ブリといえばなんといっても冬が旬。刺身はもちろん、北風吹く寒い夜にいただくあつあつのブリ大根や照り焼きなどは人気もの。「寒ブリ」をつかった伝統的な料理では、金沢(石川県)の「かぶらずし」が有名。塩づけにした輪切りのカブに切りこみを入れ、そこに塩づけしたブリの切り身をはさみ、さらにそれを米こうじでつけこんでつくる、いわば一種の和風「ブリサンド」。いまもこの地方のお正月には欠かせない一品です。
冬場のブリは「寒ブリ」とよばれ、あぶらがのっていてとてもおいしく、特別なものとして大切にされています。この時期の漁のスタートを告げるのは、なんと「かみなり」。冬のはじめ、寒冷前線の影響で北陸地方に、かみなりが鳴り響き、天気が荒れる現象を「ブリ起こし」といいます。産卵前のあぶらののったブリが富山湾に押し寄せるので、豊漁の合図といわれています。またブリ起こしは本格的な冬の訪れのしらせでもあり、これが聞こえると大雪になるそうです。
成長とともにワカシ、イナダ、ワラサ、ブリなどとよび名が変わるブリは「出世魚(しゅっせうお)」の代表格。西日本ではお正月を祝うおめでたい魚にもなっています。またブリの本場・富山県には、その年に娘をお嫁入りさせた親がおムコさんの家にお歳暮としてブリを贈る習慣が古くからあるのだとか。これは、娘の結婚相手が「出世」してくれますように、との願いをこめてのこと。おムコさんにとっては、ちょっとしたプレッシャーですね。