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日本では、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシの3種がおなじみ。いずれも小型の魚です。マイワシは体側(たいそく)に並ぶ黒い点が目印。東北地方などではこの点を星に見立て、「ナナツボシ」とよんでいます。カタクチイワシは上あごに比べて下あごが極端に短いのが特徴。またウルメイワシは、目が脂肪の膜でおおわれ、うるんでみえることからその名がつきました。
日本人にもっともなじみ深いイワシの味といえば、煮干しやシラスなどの加工品。シラスがイワシ?と首をひねるかたも多いでしょうが、「シラス」とは魚の名前ではなく、イワシの仲間をはじめとする数種の小魚の幼魚をひっくるめたよび名。釜ゆでにしたやわらかい「かまあげ」、それをよく乾燥させた硬めの「チリメンジャコ」、その中間の「シラスぼし」と、加工のしかたによってちがった食感が楽しめます。
おせち料理に欠かせない「田作り」はカタクチイワシの子どもを干して作ります。イワシなのに「海」ではなく「田んぼ」に名前が関係しているのは、文字通り「田を作る」存在だったから。食料が豊かだった古い時代、カタクチイワシが大漁になると、食料だけでなく田んぼの肥料としても使われていたそうです。また、イワシを肥料にして田んぼを作ることで、五万俵(ごまんぴょう)ものお米が収穫できたことから田作りの別名「五万米(ごまめ)」という言葉が生まれたという説もあります。
「イワシ」の語源についての説は、どれもイワシには気の毒なものばかり。卑(いや)しい魚だから「いやし」がなまって「いわし」だとか、弱い魚だから「よわし」が「いわし」になったとか、とにかくもうひどい言われよう。でも最近では、成人病予防に有効な成分をふくむ魚として注目度はぐーんとアップ。「魚へんに弱いって書く《鰯》って漢字も、そろそろ見直してほしいよなあ」というイワシの声も聞こえてきそうです。