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一般に、サケといえばシロザケのこと。シロザケの仲間は川で生まれ、成長すると北の海に向かい、そこで3〜4年ほど過ごしたのち、産卵のため生まれた川に帰ります。けれど地図もないのにどうして遠く離れた故郷の川に迷わず帰り着けるのでしょう?川の「におい」を覚えている、太陽を利用した羅針盤(らしんばん)のようなしくみを体内に備えている、など説はさまざまですが、定説はいまだなし。自然界の大きな謎のひとつです。
ぶつ切りにしたサケを野菜や豆腐などとともに煮こむ味噌(みそ)仕立ての石狩鍋(いしかりなべ)は、サケの本場・北海道のあつあつ郷土料理の代表格。おなじ北海道の郷土料理でも対照的なのが、サケを凍らせて薄切りの刺身にした冷え冷えの「ルイベ」。独特の舌ざわりを楽しめるだけでなく、凍らせることでサケにつきやすい寄生虫も退治してしまうのだとか。まさに一石二鳥の珍味です。
サケの身はオレンジがかったピンク色が特徴的ですが、サケは赤身ではなく白身の魚に分類されます。サケの身についている色は、エビやカニの殻に含まれているアスタキサンチンという色素によるもの。つまり、エサとしてエビやカニを食べることで色素が体にたまって色がついていくのです。だから、サケは小さい時はまだ身の色が白く、また成熟して川をのぼり始めたサケはエサを食べなくなり、さらに栄養を卵に移行させるために身がだんだんと白くなるそうです。
サケの卵の塩漬けを日本では「イクラ」とよびますが、この言葉、もともとは「魚の卵」を意味するロシア語です。日本で生のイクラを食べる習慣が広まったのはそれほど昔のことではないようで、一説によると、日露(にちろ)戦争のさい、ロシア兵捕虜(ほりょ)がキャビア(チョウザメの卵)のかわりに食べたのが最初だとか。代用品とはいえイクラだってじゅうぶん美味。戦時中というのに、ずいぶんぜいたくな捕虜もいたものです。