最新型のスチームコンベクションオーブンを発売したときのことです。ヨーロッパではすでに広く利用されている機器であったため、私は、フレンチやイタリアンのお客さまを中心に営業活動をしていました。ところが、神田で100年近く続く老舗の割烹料理店を訪問した際、この製品にお店の大将が興味を示してくださったのです。若い職人が何人もいて、焼物といえば炭火と決まっているようなお店なので、初めは少しお話を聞いていただく程度だと思いました。ところが半年後には「若い職人が一人辞めるより、この機械が壊れる方が困る」と仰っていただけるほど、そのお店になくてはならないものとして定着していました。自分には経験があるという思い上がりが先入観となり、お客さまの立場に立った発想の妨げになっていたのです。これまで培った経験は私の武器です。けれど、それが故に凝り固まった発想しかできなくなれば、これまでの経験は弱みに転じます。市場は常に変化しています。そのため、変化に対応することを常に心がけています。