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さらなる繁殖を目指して
エンペラーの“自然育雛”に挑む!
約20年にわたってエンペラーペンギンの繁殖に取り組んでいる「アドベンチャーワールド」。生まれたヒナが成鳥になっても繁殖する、そんな理想のカタチを生み出す自然育雛の成功に向けて飼育スタッフはいろいろな工夫を重ねていました。
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親鳥に育てさせて繁殖の
サイクルをつなげる
アドベンチャーワールドでは1997年より、エンペラーペンギンの飼育を開始しました。長い間人工育雛で育ててきましたが、ヒナが飼育スタッフのことを親だと思ってしまう刷り込みの問題がありました。大人になってもペアをつくらないため、繁殖のサイクルがうまくつながっていきません。そこで、2012年から自然育雛の取り組みを始めて、翌年に初成功しました。
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ヒナの安全のため、
最初は人工育雛で育てる
親鳥が産卵したら、すぐに擬卵と取り替えます。これは親鳥が卵を壊さないようにするためです。本物の卵は孵卵器に入れて無精卵か有精卵かをチェックします。その後、無事に生まれたヒナは少し大きくなるまで人工育雛で育てます。小さなヒナをそのまま親鳥に戻すと、親鳥が潰してしまうことがあるからです。ヒナの安全を守るこれらの取り組みは、2013年から継続して行なっています。
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人を親だと思わせないための工夫
ヒナが生まれてから大きくなるまでの間、人を親だと思わせないための工夫を行なっています。飼育スタッフがヒナと接する際は、エンペラーペンギンを模した帽子と手袋をつけて顔を隠します。また、給餌を行う時には、親鳥の鳴き声を流しながら餌を与えます。こうした工夫を重ねることで、人への刷り込みを防止し、自然育雛にスムーズに移行できるようにしています。
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“おしくらまんじゅう”を防ぐ!
自然育雛に移った後、まずはヒナと親鳥を専用のスペースに隔離します。これはヒナの安全のためです。エンペラーペンギンはヒナの声を聞くと、親鳥以外のペンギンでもそのヒナが欲しくなるという習性があります。そのため、しっかり隔離しないと、たくさんのエンペラーペンギンが奪いに行って“おしくらまんじゅう”のような状態になり、ヒナが死んでしまうことがあるんです。
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生息地の温度と日照時間を再現
海獣館のエンペラーペンギンが暮らす水槽では、南極大陸やその周辺の島々に生息するアデリーペンギン、ヒゲペンギン、キングペンギンも飼育しています。生息地の環境にできるだけ近づけるために、室温は0℃前後、水温は10℃に設定しています。また、照明についても、生息地の照度に合わせて南半球の日照時間を再現しています。
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羽数が多いと繁殖しやすいワケ
ペンギン王国ではキングペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギンが生活しています。非常に羽数が多いのですが、これには理由があります。たくさんのペンギンが集まることで繁殖相手を見つけやすく、雰囲気もすごく盛り上がるんです。ペンギン王国で生まれた卵は、孵卵器に収容したり、そのまま親鳥に育てさせたりと、ペンギンの種類によって自然育雛/人工育雛を選択しています。
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ハイペースの繁殖を目指す!
毎年1羽のペースでエンペラーペンギンのヒナが誕生していますが、今後は一年で複数羽の繁殖を実現したいと思っています。また、血統のバランスがうまくとれるように、人工授精にもトライしていきたいです。アドベンチャーワールドでは現在キングペンギンの人工授精に取り組んでいるので、この成功に向けてがんばっていこうと思います。