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南極に近い環境のもとで
ペンギンたちとじっくり向き合う。
めざすはエンペラーペンギンの繁殖!
極地の環境でペンギンを飼育している名古屋港水族館。飼育スタッフの苦労も並たいていではありません。名古屋港水族館の舞台ウラや飼育の大変さなど、"ここだけの話"をうかがいました。
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場所は名古屋でも、光は南極!
南極の光を再現する設備は天井裏に設置されています。ペンギンたちは光で季節を感じ取っているので、とくに照明のメンテナンスが大切なんです。照明は南極にある昭和基地の日照時間をもとに設定してあり、明るさを細かく調整することで、繁殖や換羽の時期に合わせた季節を作り出しています。水槽の中を大きく6つの季節に分け、ペンギンたちが健康に暮らせる環境を整えています。
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製氷機で氷を降らせています
ペンギン水槽の床に敷かれている氷は、水槽裏の製氷機で作っています。この製氷機で作られた氷はコンベアを通じて水槽の天井裏まで運ばれ、そこから水槽に氷を降らせる仕組みになっています。野生のペンギンたちは雪から水分補給するため、水槽では氷でまかなっています。同時に氷で空気を冷やす効果があるのと、フンが氷にくっつくので、掃除の時に水を流すだけで汚れがとれるという効果もあります。
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水槽を冷やす&
キレイな空気を取り込む
ペンギン水槽の中は常にマイナス2℃に保たれていますが、この環境を実現するため、裏にはこんな大きな空調機が設置されています。この空調機で取り入れられた外気はろ過装置を通じて殺菌され、水槽に供給されます。こうして24時間水槽内を冷やしているんです。また、全部で170トンある水槽の水は1時間に1回ずつ、ろ過装置を通ることで、常にキレイに保たれています。
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エサを手渡しで与える理由は?
本来は水中にエサを投げるのがいちばんラクなんですが、顔を見ながらあげると、食べていないペンギンがすぐにわかるんですね。ペンギンたちは人と同じように体調が悪くなるとご飯を食べなくなるので、健康管理にも役立っています。また、南極のペンギンたちは細菌やカビに弱いので、服やブーツを着て掃除などの作業をする際には、外から菌を持ち込まないように、全部着替えてから水槽内に入ります。
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ケンカの原因はモニターでチェック
ペンギン水槽内には2つの監視カメラがついています。ペンギンたちの様子を飼育員室のモニターで観察し、72時間(3日ぶん)のデータを記録しています。たとえば、ケンカしてケガをしたペンギンがいた時や、タマゴが何らかの理由で割れてしまった時などに、原因を見つけるために使っています。巣をアップで映しておいて、ヒナがエサをちゃんともらっているかどうかなども観察しています。
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ペアづくりは基本、まかせてますが…
ペアづくりはペンギンたちにまかせていますが、強烈にモテるオスがいると、メスが何羽も寄ってくることがあります。そうした場合、流血するようなケンカになることがあるので、飼育員が手を出すこともあります。ただ、基本的には気に入った者同士でペアを作ってもらえるように観察しています。ペンギンによっては、まだ若くて子育てがうまくいかないペアもいます。タマゴを抱くのに失敗して割ってしまったこともありました。
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巣づくりに小さな石は欠かせません
ジェンツー、アデリー、ヒゲペンギンの3種類は石を集めて巣を作ります。石をいっぱい集めるペンギンもいれば、まったく集めない個体もいます。巣を作るとそこに産卵しますが、水槽内の石の数は限られているので、放っておくと石が盗まれてしまうんですね。オスとメスが交代で巣を守っているんですが、「おひとりさま」のペンギンだとペアがいないので、巣がからっぽになってしまうことがあります
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ひとつめのタマゴを温めない理由は?
私がペンギン飼育をはじめたばかりの時に、ペンギンがタマゴを温めないことがありました。心配になりましたが、その3日後に2個目のタマゴを産むと、きっちり2個とも温めはじめました。というのも、3日間の孵化(ふか)日が変わってしまうと、ヒナの成長スピードも変わってしまうんですね。先に生まれたヒナが、3日後に生まれたヒナのエサをとってしまうこともあります。
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エンペラーペンギンの
繁殖にチャレンジ!
名古屋港水族館ではまだエンペラーペンギンの繁殖に成功していないんです。毎年、繁殖の時期になるとモニターカメラを使って1、2か月ほど行動を観察しています。こうした観察を通じて少しずつわかってきたこともあるので、いろいろ試しているところですが、いつかは「これだ!」という方法を見つけたいですね。できるだけ早い時期にエンペラーペンギンのヒナを見ていただきたいと思ってます