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ペンギンたちの生態を
もっと近くで感じてもらうために
これまでにない体感型の展示を試みた海遊館。イワトビペンギンの行動を間近に見て、その魅力や生態をもっと感じてもらうために、飼育スタッフはさまざまな工夫を凝らしています。
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仕切りをぎりぎりまで低く設定
イワトビペンギンを飼育する新体感エリアの「フォークランド諸島」水槽では、アクリルパネルの高さをぎりぎりまで低く設定しています。ペンギンとお客様を完全に仕切らないため、水槽内の温度やペンギンのにおい、鳴き声をナマで感じられます。じつはイワトビペンギンは、海遊館で飼育している4種類のペンギンの中で一番気性が荒い種類です。手を入れるとつつかれてケガをすることがあるので、注意しなければいけません。
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イワトビペンギン脱走事件!?
彼らは岩場をピョンピョンと登る習性から「イワトビペンギン」という名がつけられています。その行動を見せたいという思いから、水槽の中のレイアウトは立体的な擬岩造形になっています。オープンした当初はイワトビペンギンの動き方が僕たちの想像を超えていて、想定外の場所から水槽の外に逃げてしまうこともありました。いまは改修工事を行いながら、さらに魅力的な展示を目指しています。
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体重測定に爪きり…
こまめに健康チェック
1羽ずつエサを食べた量をはかったり、足の裏をケガしていないか調べたり、週に1回体重測定をしたりと、こまめに健康管理を行なっています。命をあずかる仕事なので当たり前のことですが、いつもこまかくチェックしています。飼育されているペンギンは動きが少ないため、爪がほとんど消耗されません。必要以上に伸びてしまうことがあるので、定期的に調べて爪きりを行なっています。
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目指すは展示水槽の繁殖
フォークランド諸島水槽にいるイワトビペンギンは「ミナミイワトビペンギン」という種類です。このペンギンは国内飼育羽数が減少傾向にあり、展示が難しくなりつつあります。海遊館では展示水槽と予備水槽の2カ所でペンギンの繁殖に取り組んでいて、展示水槽では岩のあいだに巣を作れる環境を用意しています。また、人工授精に向けた研究も進めています。
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ニセモノのタマゴを温める
南極大陸水槽で飼育しているオウサマ(キング)ペンギンについても、積極的に繁殖に取り組んでいます。親鳥は産卵後にタマゴを水中に落としてしまうことがあるので、僕たちはオウサマがタマゴを産むとすぐにニセモノのタマゴとすり替えます。本物は孵卵器に収容し、ヒナがかえったら親鳥に返します。その際、かえることができないヒナもいるので、僕たちがカラを割ることがあります。親鳥がうまく育てられない場合は、代わりに子育てもします。
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日本最高齢のジェンツーペンギン
南極大陸水槽は、気温を0℃~3℃、水温を10℃に設定してあります。現在はオウサマ(キング)ペンギンが25羽、ジェンツーペンギンが12羽、アデリーペンギンが9羽と、たくさんのペンギンを飼育しています。水槽内では、演出効果として降雪装置で人工雪を降らせています。また、この水槽内には日本最高齢のジェンツーペンギンが4羽います。まだ繁殖にからんでいるので、これからも大事に飼育していきたいと思っています。
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水中給餌で運動不足解消
南極大陸水槽では週に2回、月曜日と金曜日に水中給餌を行なっています。ふだん開催しているお食事タイムでは陸上でエサを与えているので、ペンギンたちはどうしても運動不足になってしまいます。また、海水から摂取するミネラルなどの栄養素も不足しがちになります。水中でエサやりを行うことで、ペンギンたちの運動不足が解消され、同時に栄養素を摂取させることができます。
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もしかしたらケガをしてしまうかも…
フォークランド諸島水槽では、いままでにない展示手法をとったので「ほんとうに飼えるのか」「この水槽でうまく繁殖するのか」「もしかしたらケガをしてしまうかも」など不安なこともたくさんありました。ですが、いまでは11羽のうち4ペアが形成され、産卵もしています。僕たちが心配していたことを、ペンギンたちはあまりストレスに感じなかったのかな、と思います。すぐに環境に順応してくれたので、とてもありがたかったです。
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繁殖から子育てまで、
ペンギンの1年を体感できる展示に
新体感エリアは“お客様に楽しんでいただくこと”を最優先の課題として作りました。一方で、生き物にしてあげられることは、まだまだたくさんあると思います。とくにこれからは人工授精の研究と、フォークランド諸島水槽内での繁殖に努めたいと思っています。生き物だけを見るのではなく、暮らしも含めて見てもらうことで、1年を通した生態を感じてもらえる展示にしていきたいですね。