ねえ、土星人、
ちょっと聞いていただけマーズ?
おっ、火星人、
いったいどうしたんだド?
ワタシの星(火星)にもね、地球と同じように
氷があるって今まで自慢してたんざマーズ。
それが調べてみたら、氷は氷でも
ドライアイスだってことがわかったんざマーズの。
ああ、がっかりざマーズ。
どっちも「アイス」だから同じだドっ!
…ところで、氷とドライアイスは
どこがちがうド?
ふつう氷は水が凍ってできるんですけど
ドライアイスは二酸化炭素が凍った物質なんざマーズ。
マイナス125℃でドライアイスになりマーズ。
わかったド!ケーキ買いに行くと
「お帰りまで何時間くらいでしょうか?」とか聞かれて、
袋の中に入れてくれるあの湯気の出ている固まりのことだド。
それは湯気じゃなくって、気化した二酸化炭素なんですけど。
まっ、よろしいですわ…で、ここだけの話、ドライアイス氷の下には水からできた
氷が大量に固まってるんざマーズよ。
その証拠にほら!
2009年、NASAの火星探査機が撮影したクレーター。ここで発見された水氷(水でできた氷)は純度が極めて高いという。米アリゾナ大では「今回発見された水氷はちりが1%、氷が99%だった」と話していマーズ。
おっ、こんなりっぱな水の氷があるんだドっ!
この氷がとけだせば、かつて「水の惑星」だったという学説の通り、
元の姿を取りもどせるド。
それはワタシたち火星人のひそかな希望なんざマーズ。
いつかとけだしたら干上がった運河も川になって、
いろいろな植物や生物が水といっしょに暮らせるようになるかもしれませんわね。
ところで土星にも氷はあるんざマーズか?
もちろんあるド。
土星のまわりには大きな大きな輪っか[冠(わ)]があって、
その中には岩とか氷とかが大量に入ってるド。
ただ、ものすごいスピードでぐるぐる回っているから、いまだ見たことないんだド。
約450万kmの距離から撮影された土星の冠。その幅は約6,000km。氷の粒や鉄、二酸化ケイ素などで構成されているド。
ええ、なんでも秒速20kmのスピードらしいですから、時速にしたら…
60かける60で…あら、7万2,000km/時!ものすごい速さざマーズ!
それと、土星の周囲をぐるぐる回っている衛星にも
氷があることがわかっているド。
お隣さんの木星にもガニメデとかエウロパとか、
氷の衛星があるらしいんざマーズ。
ウチのご近所にある海王星の衛星トリトンも氷でおおわれていることが観測されてるド。
ここの氷も水じゃなくって、窒素(ちっそ)が固まった氷らしいド。
さようですわ。
まっ、ともかくワタシが言いたいのは、「氷は地球だけのものじゃない」ってことざマーズ。
なんていったって太陽系にこれだけあるんざマーズから、
他の恒星系やマゼラン星雲やアンドロメダ銀河にも…
それはもう、宇宙全体にくまなく氷はあるんざマーズよ。
そうなんだド。
いつの日か太陽系の外で窒素の「かき氷」を食べてみたいものだドっ。
ふぉっふぉっふぉ!
地球上で「氷」といえば、水が固体になった状態。ところが宇宙では「窒素の氷」「エタンの氷」など、水以外にいろいろな物質が固体になったものもふくめて氷と呼んでいます。だから水でできた氷は「水の氷」。火星ではドライアイスの下に水の氷が発見されています。また、地球の上ではおおよそ0℃で水が氷になりますが、宇宙には高温で氷の状態を保っている星もあります。地球から33光年離れたGJ436という星は、さまざまな観測の結果、氷の固まりである可能性が高いことがわかりました。表面はなんと250℃の熱さ。ものすごい圧力とこの星そのものの密度の高さが「しゃく熱の氷」をつくりだしたようです。
参考文献:[新版]氷の科学(前野紀一著 北海道大学出版会、2006)