「高熱が出る病気をなおすには、まわりの空気を冷やせばいい」
そう考えたのが19世紀の米国の医者、ジョン・ゴーリーでした。
当時、彼の住むフロリダ州では
黄熱病(おうねつびょう)が大流行していました。
ゴーリーは病室の空気全体を冷やすことで
黄熱病のもとになる悪い空気を除去できると考えたのです。
「病室の天井に氷を入れたタライをつって、空気を冷やそう」。
しかし当時氷といえば天然氷のみ。
はるか北の湖で氷室(ひむろ)に保存された氷は
オガクズに包まれ、船でフロリダに運ぶしかありませんでした。
と、ゴーリーは医者をやめて製氷機づくりに打ちこみます。
先人たちが設計していた冷蔵庫のしくみを元に、
蒸気エンジンで空気を圧縮することで氷をつくる製氷機を試作、
1851年に米国で最初の特許を取りました。
研究のためにたくさんの借金を負ったゴーリーには、これを実用化するための資金が必要でした。
しかしスポンサーの反応は予想外に冷たく、資金集めの途中でゴーリーは病死してしまいます。
実際に製氷機や冷凍庫が実用化されたのはそれから50年も後のこと。
もしもゴーリーの製氷機が実用化されていたら、
当時の病院も、世の中も大きく変わっていたかもしれません。
参考:
"John Gorrie." Dictionary of American Biography
"John Gorrie," Apalachicola Area Historical Society
http://www.floridastateparks.org/resources/doc/individualparks/brochures/jgm-brochure.pdf