- 学名:Aptenodytes forsteri
- 別名:コウテイペンギン
- フリッパーの長さ:35.5~36.8cm
- クチバシの長さ:8.1~8.2cm
- 食べ物:小型・中型の魚、イカ、
タコ、甲殻類 - 推定個体数:218,000繁殖つがい(1992-1994年)
貫禄たっぷりその姿に理由あり。
「エンペラー(皇帝)」という名にふさわしく、立派な体格をしたエンペラーペンギン。ペンギンの中でも最も体が大きいことには理由がある。エンペラーペンギンが生息するのは、ブリザード激しい風と雪が吹きすさび、ときに気温がマイナス60度にもなる南極大陸。どのペンギンよりも厳しい環境を生き抜くため、皮膚の下に分厚い脂肪を蓄えることで、体内の熱を逃がさないようにしているのだ。また、どっしりとした体に比べてフリッパー翼にあたる部分やクチバシは小さく、一見アンバランスに見えるが、これらもすべて寒さ対策。外気に触れる部分をできるだけ少なくすることで、体の表面からの放熱を抑えている。堂々とした皇帝の風格があるからこそ、彼らは氷に閉ざされた世界の中で生きていけるのだ。
極寒の地で繰り広げられる、過酷な子育て。
エンペラーペンギンは、地球上で最も過酷な子育てをする生き物かもしれない。繁殖の舞台となるのは、気温マイナス60度にも至る南極の冬。産卵を済ませたメスは卵をオスに預け、エサを求めて片道100キロとも200キロともいわれる海への旅に出てしまう。ここからオスたちの試練の日々が始まる。ブリザードが吹き荒れる中、仲間たちと身を寄せ合いながら、卵を足の甲にのせて立ったまま、ひたすら温め続ける。当然、エサをとることもできず、口にできるのは雪だけ。卵がかえるとヒナに食道からの分泌物
色が白いので
「ペンギンミルク」と
呼ばれているを与え、メスが戻るのをじっと待つ。その期間は実に3~4カ月に及ぶ。寒さに耐え、飢えに耐え、エンペラーペンギンのオスにとって子育ては、まさに命をかけた戦いなのである。
ヒナの色に隠された秘密。
ペンギンのヒナの見た目は大きく2種類に分かれる。ひとつは全身が茶かっ色などの地味な毛でおおわれたタイプ、もうひとつは親鳥の体色に近いツートンカラーのタイプだ。しかし、エンペラーペンギンのヒナはいずれにも該当しない。黒い頭に白い顔、体はグレーという、際立って特徴のある配色をしているのだ。これは1日中、夜の世界南極では5月末から約2カ月、
1日中太陽が出ない日が続くとなる南極の冬を生き抜くために発達したものだと考えられている。巣を持たないエンペラーペンギンは、ヒナとはぐれると落ち合える場所がない。薄暗く吹雪が続く氷の世界はヒナが迷子になり、命を落とす危険がある。そこで役立つのが、この
頭部の模様だ。くっきりとした白と黒が目印となり、吹雪の中でヒナの居場所を教えてくれるのである。