- 学名:Eudyptes pachyrhynchus
- 別名:キマユペンギン
- フリッパーの長さ:17.8~18.5cm
- クチバシの長さ: 4.5~5.1cm
- 食べ物:オキアミなどの甲殻類、
イカやタコのほか、小魚を食べている
と推測される - 推定個体数:2,000~3,000
繁殖つがい(1998年)
うっそうとした森に生きるペンギン。
「森にすむペンギン」と聞いて、ピンとくる人は少ないはずだ。一般的にペンギンといえば、南極や海の生き物というイメージが先行する。しかし、フィヨルドランドペンギンはまぎれもなく「森の住人」といえるペンギンだ。ニュージーランド南西のフィヨルドランドからスチュアート島にかけての、うっそうとした森の中に巣を構える。名前の由来は地名に、そして地名は氷河による浸食でできた複雑な湾や入り江を表す「フィヨルド」からきている。外見は、金色の眉毛のような冠羽[かんむりばね][かんう]
頭の部分に生えた飾り羽根を持つスネアーズペンギンとよく似ているが、フィヨルドランドペンギンは頬のあたりに3~6本の白いスジがあるので、見分けがつけやすい。
太古の面影を残す世界遺産の森。
フィヨルドランドペンギンが生息するエリア一帯は、険しい崖が連なる「フィヨルドランド国立公園」をはじめ数多くの手つかずの自然が残されており、世界自然遺産1990年に自然遺産として
登録された「テ・ワヒポナウム」は
ニュージーランド国土の
1割にも及ぶ広大なエリアにも登録されている。南極海を北西に進む低気圧がフィヨルドランドの山脈にぶつかるため、一帯には大量の雨が降り、また1年のうちの300日以上が雨となる。こうした気候が、ナンキョクブナなどの20メートルを超える巨木を育て、その下方には巨大なシダがおおいかぶさるという、まるで恐竜時代の森約8000万年前に大陸から切り離された
ニュージーランドには、古いタイプの植物が
いまだ残っているを思わせるような景色をつくり出す。フィヨルドランドペンギンたちは繁殖のため、倒木の下に穴を掘ったり、岩穴を利用したりして巣をつくり、冬の間をこの太古の面影を残す森で過ごすのだ。
「冬の森」こそ、繁殖成功のカギ。
森に生息するフィヨルドランドペンギンは、繁殖時期に厳しい冬をあえて選ぶ。18種のペンギンのうち、冬に繁殖を行うのはエンペラーペンギンとこの種だけなのだ。なぜ、フィヨルドランドペンギンは「森の中」で「冬」に繁殖活動を行うのか?頻繁に雨が降り、強風にも見舞われるこの地域において、むきだしの海岸は子育てには不向きだ。しかも上空にはカモメたちが飛び交い、卵やヒナがいつ襲われるかもわからない。その点、うっそうとした森の中であれば、雨や風、そして天敵の視界も木々がさえぎってくれるのである。また、森の中につくった巣の温度と湿度が繁殖に向くのが冬場であり、さらにこのエリアではイカなどのエサが冬場の方が豊富になるなどの理由もあるようだ。
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