- 学名:Pygoscelis papua
- 別名:オンジュンペンギン
- フリッパーの長さ:24.8~25.6cm
- クチバシの長さ:5.7~6.2cm
- 食べ物:小魚、オキアミ、イカ
- 推定個体数:317,000繁殖つがい
(1998年)
間違えられたままの名前。
まるでヘアバンドのような白い帯模様が印象的なジェンツーペンギン。フォークランド諸島でのインド系の人たちの呼び名「ジェンツーポルトガル由来の「異教徒」を表す言葉」からつけられたとされる。その名は、頭の白い帯模様がターバンを連想させたためだ。一方で、学名の「パプア」は、赤道のすぐ南に位置する「パプアニューギニア」に由来する。しかし、ジェンツーペンギンは南極大陸周辺の島々を中心に分布し、パプアニューギニアには何のゆかりもない。それにもかかわらず熱帯地方の名前がついてしまったのは、学名記載用の剥製(はくせい)標本につける札を間違えたという、単純なミスが原因。当のジェンツーペンギンにとってはどうでもいいことかもしれないが、間違えた名前のまま、というのは少々気の毒な話である。
絶食しらずの恵まれた子育て。
多くのペンギンは、抱卵卵を抱いて温めること
の時期には長期間の絶食に耐えなければならない。抱卵はオスとメスが交代で行い、一方が卵を温めている間、もう一方はエサをとりに出かける。相手が帰ってくるまで卵から離れられないため、その間、エサを口にすることができないのだ。交代までの期間はペンギンの種によって異なるが、エサ場までの距離やエサをとる活動時間の長さに影響を受け、最も厳しい絶食を強いられるのはエンペラーペンギンのオスで3カ月以上にもなる。一方、ジェンツーペンギンの場合、相手が留守にしているのはわずか4~12時間と短く、毎日交代できるので絶食の必要がない。これは、ほかのペンギンたちにとって非常にうらやましい話であろう。
エサがなくなる!?オキアミ減少の危機。
南極周辺に生息するペンギンたちのエサとなるオキアミ甲殻類に属する、エビに似た
動物プランクトンの一種
。ペンギンだけでなく、魚からアザラシ、クジラまで南極の食物連鎖の中心となる大切な存在だ。南極のたくさんの命を支える資源は今、2つの脅威にさらされつつある。ひとつは世界各国によるオキアミ漁の拡大。養殖魚のエサとして世界的に需要が高まっているため、今後、漁獲量が増えていくと予測されている。もうひとつは温暖化による南極の氷の減少だ。海に浮かぶ氷の底は、オキアミのエサである藻類の宝庫であり、氷の減少はオキアミのエサが減ることに直結してしまう。こうした要因によりオキアミが減り続ければ、やがては南極全体の生態系に大きな影響を与えるのではないかと懸念されている。